とある超電磁砲ピンボールマシン

1. 概要

日本の静止気象衛星は、「ひまわり」という愛称が定着しているが、事情により「ひまわり」ではなかった時期もある。このページでは、それらも含めて、最近の静止気象衛星の情報をまとめる。なお気象衛星画像は、デジタル台風次世代気象衛星「ひまわり8号・9号」画像/動画で公開している。

2. 静止気象衛星の違い

これまでの静止気象衛星は、以下のように画像センサの特性や静止衛星の位置が異なるため、衛星画像を比較する場合には注意が必要である。

ひまわり5号 (GMS-5) ゴーズ9号 (GOES-9) ひまわり6号 (MTSAT-1R) / ひまわり7号 (MTSAT-2) ひまわり8号 (Himawari-8) / ひまわり9号 (Himawari-9)
可視 (VIS) 0.55-0.90 μm @ (1.25km / 6bits) 0.55-0.75 μm @ (1km / 10bits) 0.55-0.90 μm @ (1km / 10bits) 0.64 μm @ (0.5km / 11bits)
赤外1 (IR1) 10.5-11.5 μm @ (5km / 8bits) 10.20-11.20 μm @ (4km / 10bits) 10.3-11.3 μm @ (4km / 10bits) 10.4 μm @ (2km / 12bits)
赤外2 (IR2) 11.5-12.5 μm @ (5km / 8bits) 11.50-12.50 μm @ (4km / 10bits) 11.5-12.5 μm @ (4km / 10bits) 12.4 μm @ (2km / 12bits)
赤外3 (IR3) 6.5-7.0 μm @ (5km / 8bits) 6.50-7.00 μm @ (8km / 10bits) 6.5-7.0 μm @ (4km / 10bits) 6.2 μm @ (2km / 11bits)
赤外4 (IR4) 該当なし 3.80-4.00 μm @ (4km / 10bits) 3.5-4.0 μm @ (4km / 10bits) 3.9 μm @ (2km / 14bits)
観測頻度 1時間毎 1時間毎 全球1時間毎(南/北半球は1時間に2回) 全球10分毎
衛星位置(赤道上空約 35,800 km) 東経140度 東経155度 東経140度(MTSAT-2は東経145度で待機) 東経140.7度
観測範囲 GMS-5 Coverage GOES-9 Coverage MTSAT-1R Coverage Himawari-8 Coverage

なおひまわり8号はこれまでの観測波長(バンド)が16となり、これまでの5に比べると3倍以上に増えた。各バンドの役割は、のページに、以下のようにまとめられている。

バンド 中心波長(μm) 解像度(衛星直下点) 想定される用途 有効ビット数
1 0.47μm 1.0km 植生、エーロゾル、カラー合成画像 11
2 0.51μm 1.0km 植生、エーロゾル、カラー合成画像 11
3 0.64μm 0.5km 下層雲・霧、カラー合成画像 11
4 0.86μm 1.0km 植生、エーロゾル 11
5 1.6μm 2.0km 雲相判別 11
6 2.3μm 2.0km 雲粒有効半径 11
7 3.9μm 2.0km 下層雲・霧、自然災害 14
8 6.2μm 2.0km 中上層水蒸気量 11
9 6.9μm 2.0km 中層水蒸気量 11
10 7.3μm 2.0km 中層水蒸気量 12
11 8.6μm 2.0km 雲相判別、SO2 12
12 9.6μm 2.0km オゾン全量 12
13 10.4μm 2.0km 雲画像、雲頂情報 12
14 11.2μm 2.0km 雲画像、海面水温 12
15 12.4μm 2.0km 雲画像、海面水温 12
16 13.3μm 2.0km 雲頂高度 11

バンド数について見ると、初代「ひまわり」が赤外・可視の2つのバンドしかなかったのに比べると、「ひまわり8号」(以下「ひまわり9号」も同様)は8倍の向上である。バンド数は「ひまわり2号」・「ひまわり3号」・「ひまわり4号」まで2個のままだったが、「ひまわり5号」になって従来の赤外が赤外1および赤外2に分割されるとともに、新たに赤外3が登場して、バンド数は4となった。さらに次世代の「ひまわり6号」・「ひまわり7号」では赤外4が登場して、5個の波長で観測が行われていた。そして今回の「ひまわり8号」では、可視が3つのバンドに分割されたため、従来は白黒だったひまわり画像が、初めてRGBによるカラー合成画像として作成可能となった。また、赤外1と赤外2がそれぞれ2バンドに分割、赤外3が5バンドに分割されるとともに、新たに近赤外が3バンドで登場し、合計16となる(赤外4は分割なし)。

撮影時間についても大幅な向上が見られる。初代「ひまわり」では3時間ごとの撮影しかできなかったが、「ひまわり8号」では10分ごとの撮影が可能で、18倍の向上である。実際のところ「ひまわり8号」は、西から東の走査を23回繰り返すと全球が撮影でき、その所要時間は約5分である(より正確に言えば10分間の中での非連続な5分間)。「ひまわり7号」では1440回の走査が必要だったことを考えると大きな違いである。

また、より高頻度の観測方法として「領域観測」が用意されており、東西2000km南北1000kmの領域が2個(日本付近に固定)、東西1000km南北1000kmの領域が1個、それぞれ2.5分ごとの観測が可能である。また、東西1000km南北500kmの領域が2個用意されており、こちらは30秒ごとの観測が可能である。これら領域観測は上記の全球観測の間に挟み込まれており、日本付近の高頻度撮影の他に、台風や積乱雲など変化が激しい現象の観測にも利用することを想定している。30秒ごとの観測ともなれば、Time lapse撮影(微速度撮影)として積乱雲のダイナミックな変化を捉えるのに十分な頻度であり、防災への活用なども期待されるところである。

より詳しい情報は文献を参考にしてほしい。

3. 静止気象衛星の世代

WMOのによると、静止気象衛星の世代は以下のように分けることができる。

世代 衛星 期間
第1世代(Himawari) 1977-1989
1981-1987
1984-1995
1989-2000
1995-2003
第2世代(GOES) 2003-2006
第2世代(Himawari) 2005-2015
2006-2016
第3世代(Himawari) 2014-2030
2016-2030

世代によって標準的なデータ形式も以下のように変化してきた。

  1. 第1世代:VISSR (Visible and Infrared Spin Scan Radiometer) / S-VISSR (Stretched VISSR)
  2. 第2世代:HRIT (High Rate Information Transmission)
  3. 第3世代:HS (Himawari Standard)

4. 「ひまわり後継機」問題の経緯

気象衛星「ひまわり5号」が所定の寿命に近付き、気象庁は後継衛星を打ち上げることにした。その打ち上げ日は1999年11月15日に設定された。もしこの日の打ち上げが成功していれば、ひまわり後継機となる「運輸多目的衛星1号機(MTSAT-1)」(後に衛星名は仮称「みらい1号」だったことが明らかに)が「ひまわり5号」から気象観測を無事に引き継ぐはずだった。しかし、打ち上げは失敗に終わった。そして、ここから混迷の時代が始まった。

この日の打ち上げ失敗をきっかけとして、まるでツキに見放されたかのように事態は悪い方向に進み始めた。次々に難問が発生した。衛星の製造を担当していた会社は倒産し、打ち上げへの利用を予定していたロケットは打ち上げ失敗。事態は一向に好転せず、ひまわり後継機は打ち上げのメドすら立たない状態に陥った。どうにもならない状況で、アメリカから衛星をレンタルして急場をしのぐことにもなった。

この悲観的な状況は、2005年2月26日にしたことで終止符を打ち、2005年6月28日から後継衛星である「ひまわり6号」が気象観測を開始した。当初の打ち上げ予定から5年以上遅れの、待ちに待った後継衛星の観測開始となった。

2005年6月28日、日本の静止気象衛星は「ひまわり6号」に引き継がれた。これまで2003年5月22日から「ゴーズ9号」で運用してきたが、晴れて再び「ひまわり」シリーズに戻ったことになる。なお「ひまわり6号」の最新情報については、でも随時紹介している。

主要年表

1999-11-15 H-IIロケットによる「ひまわり後継機」MTSAT-1の打ち上げが失敗 ::
2001-11-15 製品輸出許可手続きの遅れによりMTSAT-1Rの打ち上げが2003年初頭から2003年夏に延期
2002-05-10 MTSAT-1Rの打ち上げ遅延のため米国気象衛星「GOES-9」のレンタルを決定
2002-12-19 ひまわりからの観測引き継ぎのため米国気象衛星「GOES-9」が移動を開始
2003-04-22 赤外センサの不具合によりMTSAT-1Rの打ち上げを再延期 ::
2003-05-22 ひまわり5号からゴーズ9号への切り替え ひまわり5号からゴーズ9号へ
2003-07-15 MTSAT-1R製造元の米国スペースシステムズ・ロラール社が破産
2003-08-07 米国スペースシステムズ・ロラール社が追加経費として3000万ドルを請求
2003-10-12 MTSAT-1Rの製造続行の申し立てを米連邦裁判所が却下 :: :: ::
2003-11-29 MTSAT-1R打ち上げ予定のH2Aロケットが打ち上げ失敗 当日の気象衛星画像 :: :: :: :: ::
2004-01-30 MTSAT-1Rの2004年3月納入で合意 ::
2004-03-12 MTSAT-1Rの種子島への搬入を発表
2004-12-08 MTSAT-1Rの打ち上げが決定 ::
2005-01-19 MTSAT-1Rの打ち上げ日が2/24に決定 ::
2005-02-26 H-IIA F7ロケットによるMTSAT-1Rの打ち上げが成功 :: :: ::
2005-03-08 MTSAT-1Rが静止軌道に到達し「ひまわり6号」の愛称が決定 ::
2005-03-24 ひまわり6号の初撮影画像を公開 :: ::
2005-06-22 ひまわり6号への切り替えが6/28に決定
2005-06-28 正午からひまわり6号の正式運用を開始 :: デジタル台風:お知らせ:気象衛星「ひまわり6号」と移行期間について
2005-07-14 ゴーズ9号のデータ配信終了
2005-07-21 ひまわり5号の運用が終了 ::
2006-02-18 H-IIA F9ロケットによるMTSAT-2の打ち上げが成功 :: ::
2006-02-24 MTSAT-2の愛称がひまわり7号に
2006-05-11 ひまわり7号の撮影画像を公開 :: ::

ひまわり5号からゴーズ9号へ(過去記事)

「デジタル台風」などの研究プロジェクトで用いている気象衛星データは、主に太平洋赤道上空に静止する静止気象衛星から取得した画像である。その静止気象衛星の運用には、2003年5月22日に大きな変化が生じた。後継機の打ち上げ失敗のために、寿命を越えて危ない運用を続けていた「ひまわり5号(GMS-5)」が引退し、アメリカからレンタルした「ゴーズ9号(GOES-9)」への引き継ぎが実施されたのである(、、、、)。

切り替え当日は無事に引き継ぎが終了した()が、GMT時間で翌日になったとたんに、さっそくトラブル発生のようである()。この調子だと、月変わりなどの瞬間にもトラブル発生の危険あり? すんなり移行するのもなかなか難しそうだ。

切り替えからしばらく時間が経過しても、相変わらずゴーズ衛星はトラブル続きだ()、()。これらのトラブルは、急いで構築した受信設備の不具合が原因のようではあるが、ゴーズ衛星自体も決して万全な状態ではなく、その画像は「ひまわり」衛星画像と比較してノイズが多く(特に可視画像)、一見して画質が悪いことがわかる。

なお、ひまわり5号からゴーズ9号への切り替え時期にちょうど発生していた台風200303号のページにも、関連情報を記した。

天気予報への影響(過去記事)

ゴーズ9号という中古衛星を使うことによる、天気予報への影響はあるのだろうか? 確かに、ゴーズ9号気象衛星は、もともとあまりデキが良いものではなく、さらに設計寿命をすでに大幅に越えていて故障の不安を常に抱えている。またアメリカからのレンタルということによる不自由や制約も多い。しかしそれでも、何もないより遥かにマシであり、たとえ中古衛星であってもそこから得られる情報は膨大である。天気予報に必要な情報を観測するという観点から言えば、ひまわり時代と比べて実質的に大きな差はない、というのが現状ではないかと推測できる。

むしろ問題なのは、多様な情報を高精度で観測することにより天気予報を高度化する、という計画が頓挫していることにある。計画されているMTSATシリーズには、ひまわり時代には観測できなかった新たな波長での観測や、ひまわり時代よりも精密なセンサの装備が盛り込まれている。このような新世代の観測技術の利用を前提に進んできた研究は、それを実地に試すことができないままストップしている。つまり、ゴーズ9号でも現状レベルの天気予報にはそれほど大きな影響はないが、天気予報のレベルアップができないという点にむしろ悪影響が大きい、というのが実情に近いだろう。

そして、寿命を過ぎたこの中古衛星がいよいよ故障すれば、天気予報にとって大打撃の事態となる。もはや残された選択肢は極軌道衛星(地球を周回するタイプの衛星)のみとなるが、このタイプの気象衛星は観測間隔が長く観測範囲が狭いので、変化の激しい気象現象を常時監視する目的には不向きなのである。いつ故障しても不思議ではない中古衛星に不安を感じなくてもすむよう、一刻も早い後継衛星の打ち上げが待たれている。

5. 気象衛星画像データベース

6. 関連リンク